奥州市社会福祉協議会発展・強化経営計画

2021(令和3年度)-2025(令和7年度)

発展・強化経営計画の策定にあたって

社会福祉法人
奥州市社会福祉協議会
会長 岩井 憲男
奥州市社会福祉協議会は、平成18年4月に合併して今年で15年目を迎えました。
これまで、地域の皆様のお力をお借りして、地域における福祉の担い手であるご近所福祉スタッフの設置、地域住民による見守り活動とふれあいいきいきサロンの強化充実など、数多くの住民主体の取組みが評価され、平成27年11月には、全国社会福祉協議会長表彰を受賞することができました。
昨今の地域生活課題の変化に伴い、生活困窮者自立支援制度や社会福祉法人制度改革、地域共生社会の実現に向けた制度改正、令和2年に成立した社会福祉法の改正、新型コロナウイルス感染症の影響により収入が減少した世帯の支援など、時代に即応した社協活動のあり方と健全経営の確立が求められています。
今年度、本会では第3次奥州市地域福祉活動計画、奥州市では第3期奥州市地域福祉計画を策定することにしており、市民と協働する5か年の福祉行動プランが整います。
この時にあたり本会では、次の10年を見据えた5年間の「発展・強化経営計画」を策定し、持続可能な組織づくりと事業ビジョンを定め、存在意義の明確化に取組みました。職員による策定部会と作業チームが素案づくりを行い、5名のアドバイザーからのご助言のもと役員協議会での協議を経て、理事会で策定したものです。
策定にあたっては、背伸びをせず実現可能な計画であること、めざすべき方向性を役職員が十分に理解し、市民から信頼され必要とされる組織づくりを進めるための方策であることを意図しました。そして、本会が地域福祉を進める中核機関としての責務を確実に遂行していくための基盤を整え、組織運営と事業展開をしっかりと発展させていくことを実施方針として定めました。
策定した内容の堅実な実行にむけて邁進してまいりますので、引続き市民のみなさま、関係機関や団体のみなさまのご理解とお力添えをよろしくお願いします。
令和3年1月

参考資料

奥州市社会福祉協議会発展・強化経営計画の中間見直しについて

令和2年度に策定した奥州市社会福祉協議会発展・強化経営計画(以下、「経営計画」という。)の計画期間は、令和3年度から令和7年度までの5年間です。

中間年に当たる令和5年度については、これまでの取組状況を評価し、計画期間終了の令和7年度までに計画が達成できるよう、実施する事項・目標等を見直しました。

なお、令和5年度までの取組状況の評価において、計画が達成された項目については終了とし、見直し項目や継続項目が達成できるよう進めます。

1 計画の重点項目と見直しに係る今後の取組みの方向性

経営計画の見直しに係る今後の取組みの方向性については、次のとおりです。

奥州市社会福祉協議会発展・強化経営計画の体系図と今後の取り組みの方向性

2 取組みの方向性

経営計画の見直しについては、「達成による終了」「継続」「実施事項の変更」の3区分により評価しました。

(1) 達成による終了:8項目
令和5年度までに計画した事項や目標が達成されたことに終了
(2) 継続:8項目
計画した事項や目標が取り組み中により継続
(3) 実施事項の変更:2項目
実施方針に基づき、計画をより発展的または効果的に取り組むため、事項や目標を変更

3 実施事項の変更項目

変更項目については、次とおりです。

➢ 1 信頼ある組織・機構づくりと事業推進体制の見直し

(2)事務事業の効率性と機能性

【見直し理由】 法人全体のコスト削減を主眼に、業務の効率性や機能性を高めることを目的に、電子機器の導入やシステムの具体的な活用を図るため見直します。

➢ 4 ニーズに基づいた事業展開と評価及び支援体制の確立

(1)社会資源(地域や関係機関)との連携強化

【見直し理由】 各地区振興会との連携をより強め、各地区振興会が進めるコミュニティ計画への支援や協力に向けて見直します。

各項目の見直し内容については、「第4章 実施方針の具体的な行動計画」のとおり

変更カ所をこのように強調しています

これまでの事務事業等の主なあゆみ

年度主な事業等これまでの主な見直し事項機構
H18
  • 奥州市社会福祉協議会設立
  • 第1回奥州市社会福祉大会実施
  • 米里保育所創立50周年記念式典挙行
  • 常務理事兼事務局長
4課4支所
H19
  • すぱーく胆沢屋根修繕
  • 経営会議を設置し、組織・財政、地域福祉活動、福祉サービスの調査検討を実施
5課5支所
H20
  • 岩手・宮城内陸地震発生に災害救援ボランティアセンター設置
  • 小規模多機能型居宅あすも開所
  • 専任事務局長を職員登用
  • 正規職員の給与格差是正等処遇改善
5課5支所
H21
  • 第1次奥州市地域福祉活動計画策定
  • 胆沢ボランティア活動拠点「ほっとハウス」を閉所
  • かたりあいの輪福祉懇談会開始
  • 事業検討委員会による事業調整と統一
5課5支所
  • 本所機能を江刺と胆沢の各支所に分置
H22
  • 東日本大震災の発生、災害救援ボランティアセンターを開設、後に災害復興ボランティアセンターへ移行
  • 前沢区在宅介護支援センター受託廃止
  • 総務、地域福祉、在宅福祉の3部会を設置し、事務事業の見直し方針策定
  • 職員給与全面調整
5課5支所
H23
  • ご近所福祉スタッフ制度を開始
  • 小地域ネットワーク事業の活動助成金を統一するとともに、「ファミリーサポートセンター」「ささえあいの会」の互助の仕組み事業を全市展開
  • 奥州市福祉推進市民会議を設置
  • ふれあい・いきいきサロン全国研究交流集会inおうしゅうの開催
  • 奥州市ボランティア連絡協議会発足
  • 常務理事兼事務局長
  • 未実施区でも特別会費制度の施設・団体会費募集
    市の取組みとして拡大
  • 職員資格取得経費の助成要網を制定
  • ハートバス予約センター事務所を老人福祉センターに移転
3課1室5支所
  • 本所機能の集約と、胆沢に介護保険施設新設整備とだいしの園の増改築工事に向け施設整備準備室を設置
H24
  • 民生児童委員協議会事務局を全て受託
  • いさわ高齢者複合施設じゅあんの園開所、デイサービスセンターだいしの園増築改修
  • にこにこネットと災害時要援護者支援の取組みを統一し全市展開
  • いきいき就労センター事業廃止
3課5支所
  • 施設整備が完了したため、準備室を廃止
H25
  • 衣川区生活支援ハウス運営受託終了
  • 江刺還暦者のつどい終了
  • 前沢支所を健康管理総合センターへ移転
  • 個人賛助会員を止め、ささえあい協賛金に移行
3課5支所
H26
  • イメージキャラクター奥州社協フレアイガー誕生
  • 嘱託職員の正規職員への任用に関する規程を整備
3課1室5支所
  • 総務企画課内に子ども福祉推進室新設
H27
  • 第2次奥州市地域福祉活動計画策定
  • 生活困窮者自立相談支援事業を実施
  • 奥州市権利擁護あんしんセンターを開所し法人後見の取組み開始
  • 岩手県共同募金会長から感謝状、全国社会福祉協議会長表彰を受賞
  • 法人連携のための取組みに着手
3課2室5支所
  • 生活困窮者自立支援室を新設
H28
  • 奥州市社協設立10周年記念事業実施
  • 食の自立支援事業終了
3課2室5支所
H29
  • 訪問入浴介護事業終了
  • 地域セーフティネット会議のモデル指定開始
  • 事務事業見直し方針決定
3課2室5支所
H30
  • 生きがいデイサービスを閉所し、元気応援デイサービスを開始、同年で終了
  • 地域福祉課と水沢支所の配置を一体化
  • 事務事業の見直し着手
3課2室5支所
  • 子ども福祉推進室が総務課から独立
R元
  • 福祉推進校への新助成制度実施
  • 専任事務局長を職員登用
  • 雇用改善等働き方改革実施
  • 事務事業の見直し方針確立
3課2室5支所
R2
  • 包括支援センターみずさわ中央受託

第1章 計画策定にあたって

1 計画策定の背景とねらい

奥州市社会福祉協議会(以下「本会」という。)は、奥州市の地域福祉活動を進める中核的な組織として、平成18年4月の設立(旧2市2町1村の社会福祉協議会の合併)から15年目となりました。

この間、平成21年には事業編成作業を行い、さらに『奥州市地域福祉活動計画』〜みんなが住みよいまちづくりに向けて〜を策定し、新たに本会として組織基盤を整備するとともに、住民はじめ行政、関係団体との協働により、地域のあらゆる福祉課題への解決に取り組んできました。

その後、平成27年度に策定を行った第2次地域福祉活動計画の執行と事務事業の見直しに着手しながら、地域での福祉課題解決の仕組みづくりを行い、地域共生社会の実現に向けた一歩を踏み出しました。

しかし、少子・高齢化による人口減少や核家族化、8050やダブルケアといった新たな課題、新型コロナウイルス感染症拡大予防の影響による景気低迷などを背景に、地域の福祉ニーズは、ますます多様化・複雑化し、新たな福祉(生活)課題に直面している一方で、平成27年の介護保険制度改正と子ども子育て支援新制度の施行、平成28年には社会福祉法等の一部を改正する法律(以下「改正社会福祉法」という。)による法人制度の見直しなど、本会を取り巻く環境は大きく変容しています。

この時にあたり、より一層の経営努力と効果的かつ効率的な組織運営が求められていることから、基本理念や基本目標は継承しながらも、組織、事業、財政等における現状と課題を明らかにし、さらに地域福祉を推進するための組織・基盤の強化と法人経営の適正化を目的に、『奥州市社会福祉協議会発展・強化経営計画(以下「本計画」という。)』を策定することとしました。

加えて、第3次奥州市地域福祉活動計画の策定も同時に進めながら、両計画の相加相乗効果もねらいます。

2 計画の期間

本計画は令和3年度から令和7年度までの5年間とします。

3 計画の位置づけ

全国社会福祉協議会が平成4年に策定した新・社会福祉協議会基本要項による社会福祉協議会の活動原則は、①住民ニーズ基本の原則、②住民活動主体の原則、③民間性の原則、④公私協働の原則、⑤専門性の原則 の5つの活動原則に基づいて、地域の特性を生かした活動を行うこととされており、①住民ニーズ・福祉課題の明確化、住民活動の推進機能、②公私社会福祉事業等の組織化・連絡調整機能、③福祉活動・事業の企画及び実施機能、④調査研究・開発機能、⑤計画策定、提言・改善運動機能、⑥広報・啓発機能、⑦福祉活動・事業 の支援機能の7つの機能を発揮することとされています。

本計画は、このことを基本視点にもち、本会としての経営ビジョンや進むべき方向性を明らかにしながら、その実現に向けた組織、事業、財務等に関する具体的な方策を推進することをめざす組織における発展・強化を図るための可能な計画として位置づけるとともに、第3次奥州市地域福祉活動計画の実効性を担保するための経営戦略も兼ねます。

また、第3期奥州市地域福祉計画等の関連する行政施策にも反映されるように、奥州市との連携を図っていきます。

各計画のイメージは、次のとおりです。

4 計画の体系及び策定方法

本計画では、部門戦略別に5年間で到達すべき目標を"今後の目標"、目標を達成するための具体的な推進方法を"具体的な行動"として、年次により計画しています。

策定に際しては、管理職による策定部会と補佐・係長級職員による作業チームが処理にあたり、効果的かつ適正な計画となるよう外部有識者によるアドバイザー委員会を設け、次の策定項目を目安に、現状の把握、課題抽出、原因の究明、改善方法の立案、メリット・デメリットの検証、計画案の立案の順に作業を行っています。

5 計画の策定項目

次の項目を策定の柱とします。

(1) 信頼ある組織・機構づくりと事業推進体制の見直し

①本所と地域の拠点 ②効率性と機能性の事務事業 ③機構の再検討 ④サービスの良質化

(2) 法人運営と職員管理・育成の強化

①行動指針の制定 ②理事業務の明確化と選出区分等の検討 ③適正規模の職員配置 ④人材育成策の充実 ⑤働きやすい環境づくり

(3) 効果的な事業運営と財政基盤の確立

①会費・ささえあい協賛金の一元化 ②補助・受託事業の適正化と新規国庫座の確保 ③限られた人材や財源による効果的事業展開の模索(事務事業の見直しの継続) ④公的財源減に対応する保有財産の利活用方針の設定 ⑤安定した財源確保のための取組み

(4) ニーズに基づいた事業展開と評価及び支援体制の確立

①社会資源(地域や関係機関)との連携強化 ②福祉活動専門員の配置見直しと専門性の確保 ③3部門の事業方針の設定(地域福祉部門・介護保険部門・児童福祉部門) ④災害対応の強化

6 計画策定の視点

◆ 計画の目標

  • 本会の社会的意義を明確にする。
  • ガバナンス(統治・支配・管理を示す言葉で「健全な法人経営を目指す、法人自身による管理体制」をいう。)の強化と見える化・見せる化により透明性を確保する。
  • ダウンサイジング(スリム化)を図っていく(組織・機構・財政・事務・事業等々)。
  • 職員行動規範を策定し、個々のスキルアップを目指す。
  • 財政基盤の充実と強化を図る。

◆ 計画策定のポイントとして

  • 将来的に持続可能なしくみか。
  • 効果的な投資あるいは、効率的な内容か。
  • 恒常的に安定した望まれる市民サービスの提供か(ニーズ)。
  • 公益性公平性の観点が維持されているか。
  • 組織にマッチした内容であるか、実現できる裏付けはあるか。
  • 頑張れば達成可能なレベルなのか、無理な内容になっていないか。
  • 地域のみのオリジナルではないか、一方で本会らしさ、独自性、自主性はどうか。
  • コスト(経済的、時間的、肉体的、頭脳的、精神的)はどうか。

◆ 策定の考え方

  • 10年後のありたい姿を共通理解する。
  • 実現可能な5年目をプランニングする。
  • 5年後のあるべき姿にむけ立案していく。
  • グループワークで課題を全て提案する。

7 計画の進行管理と評価

(1) 進行管理及び評価の時期と方法等

発展・強化経営計画の進行管理及び評価においては、POCAのマネジメントサイクルを組織内に確立します。

計画に基づく実績等を評価し、計画の進行管理を行い、その結果を次年度以降の事業展開に反映させます。

また、必要に応じて外部有識者による評価の導入を検討します。

① 進行管理

職員の貴任者及び担当者を定め、事業単位等で経営計画進行管理表を用い、四半期(もしくは毎月)、中間、年度の定期に進捗状況を把握します。

② 自己評価

進行管理表にもとづき進捗状況を確認し、目標値に照らし業務執行状況を評価します計画と実績に乖離がある場合は、原因と課題を把握したうえで課長会等で早期の対応を行い、さらに三役会議、理事会の開催時に、報告及び評価をします。

③ その他の(外部)評価

自己評価等の結果について、監査時に報告します。

④ 公表

設定した目標値に対する実施状況について、状況をとりまとめ、毎年度理事会及び評議員会で進捗状況及び評価について報告をします。

また、奥州市担当部(担当課)に報告し意見を求め、福祉だより及びホームページで公表します。

あわせて、必要によっては、住民福祉懇談会において周知及び公表します。

(2) 進行管理表

適宜な様式を別途定め、各職員が適切に確認できるものを作成します。

第2章 組織・財政等における現状と課題

1 奥州市の現状について(奥州市資料引用)

平成28年3月に奥州市が策定した奥州市人口ビジョンによると奥州市の総人口は、2000(平成12)年以降、減少傾向にあり、今後も減少が続くとされています。

年少人口(0歳から14歳)及び生産年齢人口(15歳から64歳)は、1980(昭和55)年以降、減少傾向にある。一方、高齢者人口(65歳以上)は、一貫して増加傾向にあり、今後は2020(令和2)年をピークに、その後は緩やかに減少していく、と推計されている。

1980(昭和55)年以降、生産年齢人口の減少傾向と、高齢者人口の増加傾向は、ほぼ一貫して見られ、1980(昭和55)年には、高齢者人口一人に対し、生産年齢人口5.76人で支えていたのが、2000(平成12)年には、2.60人、2010(平成22)年には2.01人、さらに2040(令和22)年には1.27人で1人の高齢者人口を支える必要がある。

出典:総務省「国勢調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」

同計画の世帯数の推移の推計値も公表されています。

各地の人口変動の割合から、上記の人口ビジョン区分ごとの世帯数の推移を求めると、下記になることが推計される。

単位(人)2015年2020年2025年2030年2035年2040年
平地37,06135,18633,35931,51329,69527,859
中山間地5,1904,7494,3533,9793,6433,325
山間地2,0341,8281,6421,4661,3171,186
合計44,28541,76439,35336,95834,65432,369

このことから、奥州市の人口と世帯数は著しく減少していくことを予測し、本会として将来に向けた対策を事前に構築しておく必要があります。

2 奥州市社会福祉協議会の組織体制について

本会は、地域福祉部門のほか、放課後児童クラブや保育所の児童福祉部門、介護保険事業と障がい者をサポートする介護福祉部門などを運営し、幅広い年齢層の様々な対象者のためのサービスを実施することから、様々な雇用形態の職員が従事し、県内の社会福祉協議会でも最大規模の組織編成で事業を展開しています。

近年は、地域における福祉問題の複雑多様化などの社会構造の変化に伴う在宅福祉サービスを支えるため、本会の担う役割は増大しています。一方、介護事業や放課後児童クラブでの新たな取組みを進めてきた経緯があり、その結果、職員数も増えてきました。また、東日本大震災の被災者支援等のために多くの職員の緊急一時雇用をしており、復興が進み事業縮小による職員数の減少はあるものの、震災以前の状況までスリム化することはできていません。

右表は、平成26年度から令和2年度までの法人運営・地域福祉部門、介護福祉部門、児童福祉部門の職員数の推移状況です。法人運営・地域福祉部門は、嘱託職員の正規登用と新卒者の年次計画採用を進めてきており、平成28年度をピークに職員総数は減少しています。介護部門の職員総数は、ほぼ横ばい状態ですが、嘱託職員の正規登用を進めた結果、正規職員比率は増えています。児童・保育部門にあっては、平成28年度に胆沢地域の放課後児童クラブを、平成30年度に前沢地域放課後児童クラブを奥州市から受託したための職員数の増加ですが、正規職員総数に変化はありません。

平成18年度の市町村合併以降、事務処理方法や労務管理の統一、事業精査と整理、事務事業の見直しなどを進め、組織基盤の整備と市民の信頼に応えるべく業務の推進をしてきました。しかし、大きな組織の課題として、各部署間の連携や情報共有の不足の予防と住民の複雑多様化する生活課題解決のために、共通理解と連携は不可欠となっています。

また、これまでも多くの職員の処遇改善と資格取得や研修機会の提供に努めてきたものの、福祉人材不足(特に介護職と保育職)は顕著であり、より良い人材を確保するために、さらなる処遇改善の取組みと職員教育の充実、働きやすい環境づくりによるワークライフバランスを実現しつつ、市民への質の高いサービスの提供が必要です。

平成29年の社会福祉法人制度改正に対応したガバナンス強化や事業運営の透明性の向上、財務規律の強化を行うとともに、関係機関とのネットワークの構築が求められています。地域福祉推進の中核機関として、市民と協働し地域課題を適切にとらえ、解決への試みを互助の仕組みによって支援し、課題解決に向けた新たな資源開発を常に模索していくことで、市民理解と参画、協力を推進できるような組織づくりと体制づくりが求められています。

奥州市社会福祉協議会における各年4月の職員数の状況

(単位:人)

法人運営・地域福祉部門

平成26年度平成27年度平成28年度平成29年度平成30年度令和元年度令和2年度
正規職員24282928293130
嘱託職員16161619131313
臨時・パート職員68677366615761
108111118113103101104

介護部門

平成26年度平成27年度平成28年度平成29年度平成30年度令和元年度令和2年度
正規職員19222429313535
嘱託職員31262319181313
臨時・パート職員60606460605560
110108111108109103108

児童・保育部門

平成26年度平成27年度平成28年度平成29年度平成30年度令和元年度令和2年度
正規職員16161617161517
嘱託職員6101414171716
臨時・パート職員60527278969680
8278102109129128113

合計

平成26年度平成27年度平成28年度平成29年度平成30年度令和元年度令和2年度
正規職員59666974768182
嘱託職員53525352484342
臨時・パート職員188179209204217208201
300297331330341332325

3 奥州市社会福祉協議会の収支状況等について

右表は、平成26年度から令和元年度までの本会の事業活動による資金収支の推移状況です。

本会の地域福祉を支える会費収入は、若干減少してきているものの、ほぼ横ばいで推移しています。一方、寄附金収入は、平成29年度以降減少傾向にあり、令和元年度の自主財源比率(会費と寄附金の合計額を総収入で除したもの)は4.5%となっています。なお、平成26年度まで会費収入で処理していたささえあい協賛金(約800万円)を、平成27年度から寄附金として扱うこととしたため、会費収入は減、寄附金収入の増になっています。また、自主財源である会費、協賛金及び共同募金の状況については、10頁に年度毎の状況を掲載しています。

経常経費補助金収入は、いくぶん増加傾向です。

受託金収入は、事業収入も一部連動しますが、平成27年度の増加は、生活困窮者自立支援事業(2,400万円)を新規受託したことによるものです。平成29年度の減少は、配食サービスの休止(△350万円)、災害ボランティアセンター終了(△260万円)、住民ささえあい事業の減額(△200万円)が主な要因です。平成30年度の減少の理由は、主に生きがいデイサービスの廃止(△|,400万円)によるものです。令和元年度の増加は、生活困窮事業での家計改善事業(414万円)への取組みがその理由です。

事業収入は、配食サービスや生きがいデイサービス等の受託事業の休止や廃止による利用者からの利用料の減により減額しています。

介護保険事業収入は、制度改正の度に減少していますが、平成30年度の増は、生きがいデイサービスから移行した元気応援デイサービスの新たな実施(600万円)によるものです。

児童福祉事業は、平成28年度は胆沢地域の放課後児童クラブ運営の受託(3,500万円)、平成30年度の増加は前沢地域の放課後児童クラブ運営の受託(2,400万円)により増加していますが、令和元年度には、胆沢地域の一部の放課後児童クラブ運営の受託を終了しました。

支出について、本会の人件費比率は概ね74%で推移しています。総額の増減は、退職金の支出によるものが主な原因で退職者数の多い翌年が人件費比率の高い状況になります。

事業費支出は、やや減少傾向がみられますが、事務費支出はほぼ横ばい状態です。その他の支出が平成27年度に著しく減少している理由は、消費税(800万円)の支出を事務費支出に科目変更したためで、その分が事務費で増となっています。

支出について、上記以外はどの科目においても著しい変化はありません。

令和3年度には、米里保育所の閉所、奥州市からの補助事業、受託事業の終了(取り止め)など、非常に厳しい局面を迎えます。

堅実なあゆみで市民賛同が得られるような経営戦略を確立させ、財源確保のために自主財源の拡充や長期的な資金運用管理を行うとともに、徹底したコスト削減に努め、制度の狭間で支援を求める住民のために新たな事業の必要性と効果について行政に提案を行うなど、役職員一丸となって一層の努力を払う必要があります。

奥州市社会福祉協議会の事業活動による資金収支の推移の状況

(単位:円)
項目平成26年度平成27年度平成28年度平成29年度平成30年度令和元年度
収入会費収入39,292,31031,323,55030,813,54030,357,09430,515,25030,356,750
寄附金収入8,313,57316,053,88316,258,89514,657,50914,750,28914,558,092
経常経費補助金収入101,644,684102,556,745103,637,633103,724,780105,281,311104,742,529
受託金収入172,567,762191,449,997194,342,585185,077,775145,479,869154,050,773
貸付事業収入3,485,0872,182,2761,858,7591,939,3721,869,0181,934,933
事業収入16,683,52816,285,70714,641,12611,200,8458,747,2308,350,105
負担金収入180,000180,000180,000180,000180,000358,550
介護保険事業収入366,962,274360,353,734343,535,609340,763,062359,687,565352,935,584
児童福祉事業収入148,666,800160,460,700195,325,000222,252,000237,410,600259,332,065
保育事業収入38,119,96136,925,21235,156,28730,170,24830,038,70526,292,267
障害福祉サービス等事業収入32,982,62637,027,05039,358,13039,051,26237,982,16236,770,192
受取利息配当金収入73,62974,91263,63221,32030,28727,160
その他の収入10,728,9394,168,7358,736,02415,986,1785,153,20013,793,002
事業活動収入計(1)939,701,173959,042,501983,907,220995,381,445977,125,4861,003,502,002
支出人件費支出664,443,939676,074,430714,613,610727,898,479710,997,441757,583,245
事業費支出181,940,461186,497,107196,289,488182,605,550179,506,701173,420,850
事務費支出27,554,61235,384,85233,908,91335,804,50033,548,03835,992,893
貸付事業支出2,405,0001,492,7001,185,0001,604,0001,684,0001,724,000
分担金支出50,00050,00050,00050,00050,00050,000
助成金支出25,593,16025,641,66024,067,25025,391,22626,010,84527,422,107
その他の支出9,597,6071,423,2261,364,000995,4451,619,709938,986
流動資産評価損等による資金減少額232,8750274,000143,680384,03665,000
事業活動支出計(2)911,817,654926,563,97571,752,261974,492,880953,800,770997,197,081
事業活動資金収支差額
(3)=(1)-(2)
27,883,51932,478,52612,154,95920,888,56523,324,7166,304,921

奥州市社会福祉協議会における自主財源の状況

(単位:円)

会費の推移

平成25年度平成26年度平成27年度平成28年度平成29年度平成30年度令和元年度
住民会費30,465,10030,277,00030,051,55029,644,54029,199,09429,233,25029,104,750
施設・団体会費106,00078,00077,00085,00093,000112,000100,000
法人賛助会費1,240,0001,200,0001,195,0001,084,0001,065,0001,170,0001,152,000
31,811,10031,555,00031,323,55030,813,54030,357,09430,515,25030,356,750

寄附金・協賛金の推移

平成25年度平成26年度平成27年度平成28年度平成29年度平成30年度令和元年度
一般寄附金6,427,4965,592,4407,087,0817,788,9957,152,8097,306,6897,146,192
指定寄附金30,0002,721,1331,272,802940,000000
ささえあい協賛金7,580,0007,737,3107,694,0007,529,9007,504,7007,443,6007,411,900
14,037,49616,050,88316,053,88316,258,89514,657,50914,750,28914,558,092

共同募金の推移

平成25年度平成26年度平成27年度平成28年度平成29年度平成30年度令和元年度
赤い羽根募金24,492,16623,924,63323,866,26924,411,57223,460,76024,114,69223,720,495
歳末助けあい募金14,377,51213,937,52814,290,75113,598,46413,735,87013,902,54414,024,433
災害義援金等131,629168,860113,6964,676,884303,2381,088,765938,264
39,001,30738,031,02138,270,71642,686,92037,499,86839,106,00138,683,192

奥州市社会福祉協議会における福祉基金・積立金・支払資金残高の状況

(単位:千円)
平成25年度平成26年度平成27年度平成28年度平成29年度平成30年度令和元年度
福祉基金174,551175,551176,551177,551178,551179,551179,551
施設整備積立金13,34011,82811,82811,82814,82814,82814,828
人件費積立金15,87515,87515,87515,87515,87515,87549,531
修繕費積立金4,0006,0007,0002,0002,0002,0000
当期末支払資金残高126,242153,210164,247169,573184,278196,304161,949

上図は、本会の福祉基金及び積立金、支払資金残高の推移状況です。

福祉基金は、資金利息を福祉事業に活用するための基金として創設されており、約1億8千万円の預金額となっていますが、低金利の長期化のため運用益となるほどの利息額となっていないのが現状です。これまで、毎年介護事業の運用益で年100万円の積み増しをしてきましたが、令和元年度には、介護事業からの充当も厳しい状況となりました。

また、本会財産である福祉センター等の各施設も、その多くは建設後20年以上経過し、老朽化により様々な修繕を実施しました。修繕費積立は平成27年度以降減少し、令和元年度の修繕をもって蓄えがなくなりました。

一方、人件費積立金は、令和4年度に人件費総額のピークを迎えると予想されることから、令和元年度に当期末支払資金残高を減少させて積み増しをして対策を講じています。

次頁には、県内各市町村社協との比較表を掲載しています。県内主要市等の平均に比較して、本市における1世帯あたりの協力は、会費が1.4倍、寄附金は1.4倍となっており、市民の皆様から多くの理解と協力が得られているといえます。

令和元年度における県内主要市町社会福祉協議会の比較

No.市町村社協名人口(R2.7.1)世帯数(R2.7.1)社会福祉協議会の会費寄附金人件費
世帯会費年額会費収入額1世帯あたりの額寄附金収入額1世帯あたりの額職員数(R2.7.1)職員人件費支出額支出に占める人件費額
1奥州市115,04745,75790030,357663.414,558318.2326757,58376.0
2盛岡市291,056133,70020021,181158.42,51418.8214481,92573.2
3宮古市50,97723,5621,00018,203772.62,405102.1227572,02172.0
4大船渡市35,36314,9181,0009,780655.658138.980217,47852.6
5花巻市94,68437,93690023,954631.44,595121.1263744,34775.8
6北上市92,39339,12170018,316468.266817.166141,83053.8
7久慈市34,31815,7211,00010,543670.643927.938147,39664.8
8遠野市26,23010,7517006,088566.354951.1173532,72275.8
9一関市114,24146,3701,00032,654704.216,455354.9261679,11868.9
10陸前高田市18,5007,6121,0006,645873.03,807500.139106,56270.4
11釜石市32,45216,208300〜1,0003,814235.32,415149.075267,91277.1
12二戸市26,33711,8401,0008,670732.399283.8182563,45482.9
13八幡平市24,98210,5601,0008,008758.31,00595.23291,72965.1
14滝沢市55,40623,4485007,568322.889738.32269,98667.6
15金ケ崎町15,5876,1681,0004,266691.61,535248.996244,25174.5
平均68,50529,57885014,003473.43,561120.4140374,55470.0

※釜石市では、東日本大震災の影響で世帯会費年額の一律設定ができていないため、平均額の算出から除いている。

第3章 基本理念及び計画体系

社会福祉法人奥州市社会福祉協議会の基本理念(ビジョン)

だれもが心の豊かさと幸せを実感できる「福祉のまち奥州市」をめざして

新たな福祉のまちづくりにあたっては、だれもが「この地域に住み続けたい」願いをかなえるため、市民一人ひとりのふれあい、ささえあい、たすけあい、わかちあい、かたりあいの輪をひろげ、みんなが心の豊かさと幸せを実感できる「福祉のまち奥州市」をつくります。

  1. 市民の福祉に対する願いに応え、「みんなと交わる」ことを大切にしながら、親しみに満ちた福祉活動をめざします。
  2. 市民の福祉に対する関心を高め、「みんなとともに楽しむ」ことを大切にしながら、市民参加による福祉活動をめざします。
  3. 市民の福祉に対する理解を深め、「みんなのために役立つ」ことを大切にしながら、よりよい自立に向けた福祉活動をめざします。
  4. 市民の福祉にかかわる活動をしている人たちと手を結び、「みんなのための福祉」のあるべき姿を考え、市民の信頼に応える福祉活動をめざします。
平成17年10月12日制定

奥州市社会福祉協議会発展・強化経営計画の体系図

第4章 実施方針の具体的な行動計画

1 信頼ある組織・機構づくりと事業推進体制の見直し

(1) 本所と地域の拠点(支所)

本会は、法人運営や事業調整の役割を担う本所と、5つの地域福祉圏域(合併前の市町村の単位)に支所を設け、地域福祉の充実をめざし事業展開を行ってきた。奥州市地域福祉活動計画に基づくこれまでの取組みは、各種事務事業を標準化させることで、効果的な共通の目的を持つ事業となり、さらに地域福祉推進の母体である行政区(町内会)では、地域セーフティネット会議を中心とした、互助をめざす住民と協働する仕組みを構築することができてきている。

これまでは、職員配置と運営費の捻出に工夫を凝らすなど支所の維持のために苦慮してきた。そのことで、地域的な事業には効果を発揮してきたが、効率的な運用や集中的な取組みに時間のかかる状態となっている。令和3年度以降は、行政からの補助金が減額となりさらに自主財源の工面が厳しくなることが想定されることから、各支所における業務内容や機能面の抜本的見直しを行い、地域拠点としての支所のあり方について、スリム化と効率化を視野に検討する必要がある。

地域福祉事業充実のための拠点として、支所はこれまでどおり継続設置することとし、市民サービスの低下を招くことのないような仕組みづくりを進める。本所への事務機能の集約を進め、住民との協働を集中的に行う環境を整えるとともに、支所業務の利便性の確保、経費節減等の視点での事業展開を一層進めていく。

加えて、デジタル化を推進し、本所・支所でのビデオチャット(パソコンの画面等を通して相手と通話すること)ツールを活用する等、オンラインによる事業の効率化や相談機能の強化のためのモニター相談対応等を模索していく。

地域福祉課に支所機能を掌る部門を統合する。支所にあっては、常駐職員と福祉活動専門員の支所担当制の勤務形態の仕組みをつくり、問題対処機能の強化と即応性を確保していく。

機構として、地域福祉課内に本所と支所を統合し、地域福祉事業を奥州市全体で考える仕組みをつくり、効果的な人員配置と連携の強化、職員資質の向上を図る。

また、事業等で多くの人員が必要な場合は課内全体で対応するなど、職員の集中による意識と意欲の向上を図っていき、地域と協働する職員の質と仕組みの充実もねらう。

奥州市の財政はひっ迫しており、本会への影響も少なくない。会費の増額もすぐには見込めないため、組織・体制の見直しが必要である。

共通の目標を持ち、同じ視点で従事することから課題意識が高まり、意欲と解決能力の向上につなげていける。また、円滑に情報共有ができ、公用車や備品等管理の効率化にもなる。

従来どおりの地域との関係性を築きながら、機能的な事業展開が図ることができる。

年度実施する事項・目標等
3年度
  • 地域福祉課からの福祉活動専門員の勤務を開始する。
  • オンライン環境を整備する。
4年度
  • 住民から意向調査をし内部で検証、更なる改善点について対処する。
5年度
  • 住民からの意見を徴し、更なる改善点等について検討する。
6年度
  • 財政状況を確認し、検討した事項を実施する。

(2) 事務事業の効率性と機能性

事務事業を進める際の起案・案内通知・資料作成・各種申請等のほとんどの処理が、紙を中心としたものとなっており、作業・時間・経費のいずれにおいても高コストとなっている。近年、エコや効率化の観点から「ペーパーレス化」が推奨され、すでに取り組んでいる事業場や職場も多くなっている。

本会においては、事務処理を中心とする職員はパソコンを使用し、グループウエア(ネットワーク経由で、情報共有やコミュニケーションを行い、業務効率を上げるツール)や会計処理システムを活用し、業務にあたっている。

書類の電子化によるペーパーレス化、業務効率化のためのシステム等の活用をさらに進め、効率性と機能性を高めていく。

これまで使用していたグループウエアを令和2年度に更新し、電子決裁や出勤・退勤の管理ができるなど拡張性と機能性が高く、かつ運用面で安価なものに切り替えた。それを核とし、職員が運用しやすい仕組み、省力化できる業務の抽出、マニュアル化できるものなどを検討し電子化を進めていく。

実施にあたっては、事務局長を含めた職員5名による「(仮称)業務の電子化・マニュアル化チーム」を、総務財政課(機構改編)所管として設置し推進する。

なお、電子化を推進するに際し、専門的な知識や経験を必要とすることから、それに精通する職員の雇用や業務委託方式などによる推進を検討していく。

また、必要とされる公文書管理、各種情報管理、情報公開等の対応も併せて検討する。

電子化を進めるだけで、書類作成のための用紙やプリンター・コピー機の印刷経費、巡回便(火・金曜日に本会各事業所を回り書類等を送達する仕組み)の対応する非常勤職員の人件費及び車両燃料等などで、おおよそ年額約100万円程度(用紙代約15万円、運転手賃金約27万円、ガソリン約8万円、会計事務17万円、会計保守33万円)の経費削減が期待できる。また、会議録や申請業務等の大量の資料等は、スキャンして電子データ化の管理をすることで省力化と共有化、保存の効率化が図られる。

また、意思決定プロセスのシステム化(電子決裁)や、職員の勤怠管理の仕組みを作ることで簡素化と迅速化が図られることも期待される。

年度実施する事項・目標等
3年度
  • 業務の電子化・マニュアル化チームを立ち上げ、電子化の必要な業務を抽出し、効果的な運用について見直しを行う。
  • 電子決裁については、段階的に運用を開始していく。
4年度
  • 勤怠管理のシステムについて検討を行い、正式運用について判断する。
  • 会計業務に際しての経理規程等システム運用に係る閲覧規程を整備する。
  • 電子会議室など他の電子化について、推奨委員会を中心に検討する。
5年度
  • 経費の削減状況、業務の効率化について調査する。
6年度
  • 電子機器(パソコン・通信機器等)の構築状況や使用状況を整理し、コスト削減も含めた新たな方向性を見出し取り組む。
7年度
  • 現状について検証を行い、必要により新たな方向性について検討する。

(3) 機構の再検討

現在、本所は、総務企画課、地域福祉課、在宅福祉課、子ども福祉推進室及び生活困窮者自立支援室の3課2室であり、半月に1回の割合で課長会議を開催し、情報共有と連携を図り運営している。そのほか、支所や介護事業所、児童クラブ等の出先拠点とは、月1回の管理職・管理者連絡調整会議と支所長会議で情報共有を図りながら事業を進めている。

近年の社会情勢により、本会の財源は逼迫(会費口数や額の増は困難、行政からの補助・委託金の減少、介護保険事業収益の減少など)し、現状の事業内容の継続、職員体制の維持は困難な状況にある。

最小の経費で最大の効果の視点を持って、組織内の円滑な連携及び効果的な組織運営等を検証し、機構と系統が適正かどうか、職員の配置数は妥当か、業務の量と質の課題、持続できる仕組みとなっており将来にわたって運営が可能かどうか等の見直しを行う必要がある。

機構を本所5課に改編し、地域共生社会の実現に向け、重層的な相談機能の強化とアウトリーチ(支援が必要であるにもかかわらず届いていない人に対し、積極的に働きかけて情報・支援を届ける過程のこと)の徹底をめざしていく。

また、地域福祉計画及び地域福祉活動計画に盛り込まれる重点事業にあっては、奥州市と協議を重ね、早期に展開できるように取り組んでいく。

機能強化が求められている「生活困窮者自立支援事業」と「権利擁護事業」を主軸として、「生活福祉資金等貸付事業」、「地域包括支援センター受託事業」の本会が果たすべき相談援助事業を掌る「生活応援課」を新設する。

これに併せ、総務企画課及び地域福祉課の業務も見直し、「総務財政課」と「地域福祉課」にそれぞれ再編する。また、支所については、地域福祉課の所管とし、各支所を担当する福祉活動専門員が中心となってその業務にあたる。

介護保険部門については、在宅福祉課と各施設長による合議の取組みであったが、「介護事業課」を新設し、総合的な見地で介護保険事業を運営する。

また、子ども福祉推進室については、「こども福祉課」とし、これまでの業務に加え児童福祉部門の事業も実施するなど、子育て支援充実の視点に立ち事業推進していく。

見直し後の機構については、次のように想定し検討を進める。

事務局長
  1. 1.総務財政課《課長・課長補佐》
    1. ①総務係(法人運営、秘書人事)
    2. ②財政係(会費・経理、資産管理)
  2. 2.地域福祉課《課長・課長補佐》
    1. ①地域福祉係(各支所、ボランティア・市民活動センター)
    2. ②企画調整係(広報、法人連携)
  3. 3.生活応援課《課長・課長補佐》
    1. ①生活支援係(権利擁護あんしんセンター、資金貸付)
    2. ②くらし応援係(生活困窮者自立支援、包括支援センター)
  4. 4.こども福祉課《課長・課長補佐・施設長》
    1. ①管理係(施設管理、庶務経理)
    2. ②児童支援係(放課後児童クラブ、ファミリーサポートセンター、こども食堂運営支援、子育て拠点の支援他)
  5. 5.介護事業課《課長・課長補佐・施設長》
    1. ①在宅介護グループ(庶務・経理、居宅介護支援サービス、訪問介護事業、給食調理事業)
    2. ②拠点施設グループ(通所介護、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護)

機構が5課に集約されることにより、各課長を中心として機動性が確保されるとともに、相互間の連携も円滑に進めやすいものとしていく。

組織の見直しを図ることで、必要なセクションへ人材を集めることができ、事務事業の取組みが効率的に行われる。さらに、地域福祉部門においては、職員の集約による人件費の抑制を図ることができる。

また、事業担当課の集約は、系統立てた組織の機構づくりにつながるとともに、意思決定の円滑化や専門職員の効果的配置・職員定数の確立などに期待がもてる。

年度実施する事項・目標等
3年度
  • 機構改革や業務対応時間短縮について、関係団体や住民等へ説明し、理解を得る。
  • 第1次機構改革を実施する。
4年度
  • 新設の機構に基づき事務組織規程の整備を行う。
  • 第2次機構改革を実施する。
5年度
  • 新機構による組織運営と事業実施を行う。
  • 年間の効果を検証し、更なる改善点等について検討する。
6年度
  • 検討した事項への対応をする。
  • 介護保険事業等制度改正のある事業のバランスを確認し、対応できる機構になっているかを検証する。
7年度
  • 年次移行部分を再確認、財政状況も鑑み、再度見直しをする。

(4)サービスの良質化

サービスの良質化に向けて、どの職員が担当になっても円滑に事務事業が推進できるようにすること、どの職員でも市民に対して同様に質の高いサービスの提供ができるようにすることの2つの視点での検討が求められる。

現在、事務事業を円滑に進めるための手順書(どのような目的で、どんな内容を、どのような手順で、いつから取り組み、いつまでにする)のようなものは整備されていない。前担当者との事務引継ぎなどで対応しているが、上手くいかないケースも見られる。

一方、市民に対して画一的に対応できるようにする業務マニュアルは、介護保険事業等を含め市民サービス事業では整備されているが、日々の業務を遂行する中で見直し改定や研修を実施するまでには至っていない。

必要と思われる事務・事業ごとに手順書を整備し、それを有効活用することて、業務の効率化と職員の定着化により組織力の強化を図る。

実施にあたっては、令和3年度中に担当する職員が当該年の事務事業について手順書を作成し、業務の電子化・マニュアル化チームの決定によりグループウエアにテキスト化し、業務・サービスの質が高いものとなるように進める。

既に作成してあるマニュアルについては、再検討、見直しと研修の機会を設定する。

ただし、手順書に頼りすぎると、考慮することや応用力が身につかないなどの懸念、更新作業の煩わしさなどのデメリットも挙げられることから、並行して対処を検討する。

業務効率化やコスト削減につながり、いつでも誰でも仕事の全体像をつかみ、業務内容を理解することができる。また、業務の抜け漏れや職員毎のスキルの違いを軽減し、仕事の質が安定する。

この業務は担当者しか知らない、あの人にしかできない仕事といった、個人依存・属人化が軽減され、引継ぎも円滑に進むものと考えられる。また、曖昧な業務(なんとなくの感覚で行っている業務や、「ずっとこうやっているから」的な業務等)が可視化され、業務が円滑になり、無駄な部分や改善点も見つかる。

年度実施する事項・目標等
3年度
  • 事業担当職員が事務・事業執行手順書を作成し、業務の電子化・マニュアル化チームの決定により、手順書をグループウエアに掲載する。
  • 介護保険事業の業務マニュアルを再検討し、改訂が必要な場合は修正し、事業場ごとに夜間研修や休日研修の機会を設ける。
4年度
  • 作成した手順書をもって引継ぎを行う。
  • 手順書改定の仕組みづくりを検討する。

2 法人運営と職員管理・育成の強化

(1) 行動指針の制定

本会としての基本理念はあるが、それを達成するための行動指針はない。社会福祉法人制度改革に基づく、ガバナンス(健全な企業経営をめざす、企業自身による管理体制)の強化や透明性の向上、公益的な取組みの強化と福祉人材確保の促進のためには、本会職員としての明確な指針の制定が不可欠となっている。

事業分野で経営方針の性質は異なるものの、職員の行動指針により、めざすべき「奥州市社会福祉協議会像」を明確にして、全職員共通の意識を持つ必要がある。

めざすべき本会の使命の基に、各部署におけるサービス向上や経営改善、経営意識の醸成等によって、福祉サービスを将来に渡って安定的に提供し続けるための体制を強化し、本会としての使命を果たすよう行動指針を策定する。

サービスの質の向上にむけて、課長会の発信で行動指針案を職員から募集して、早急に策定する。

行動指針の参考例は、次のとおり
私たちは、
  1. 1 常にお客様の立場に立ち、社会環境の変化に即応する事業に挑戦します。
  2. 2 幅広い関係者との連携・協働を進めます。
  3. 3 経営基盤の強化・刷新に向けた改革を進めます。
  4. 4 他人(ひと)を思いやる優しい心、高い専門性、強い貴任感を持ち、常に向上・発展します。
[岩手県社会福祉協議会基本方針(行動指針)]

職員像や規範が明文化されることから、どの部署で働いていても「奥州市社会福祉協議会の職員」として、共通した意識と連帯感を持つことができる。

加えて、職員が公共性・公益性の高い民間非営利団体である「奥州市社会福祉協議会の職員」であることを改めて自覚することにつながる。高いコンプライアンス(法令遵守)意識と意欲をもって業務やサービス提供に当たる職員が増えることで、より市民の信頼に応えることができ、行動指針の明文化が判断や行動の拠り所にもなる。

年度実施する事項・目標等
3年度
  • 職員から公募し、行動指針を定める。
4年度
  • 行動指針の実践について徹底を図る。
6年度
  • 行動指針の実践ができたかどうか検証し、更なる推進に努める。

(2) 理事の明確化と選出区分等の検討

社会福祉協議会は、地域社会に存在するあらゆる人々や組織の参画を得て事業を展開し、福祉コミュニティ形成めざすことを柱としている。そのため、社会福祉に関する多種の関係者や行政、住民組織の構成員の中から役員や評議員を選び、それぞれの立場から地域福祉の推進や経営について幅広く議論し、運営することが原則である。

さらに、本会に求められている様々な社会的責任を果たすためには、地域福祉・社会福祉に関する専門性とともに、財務、労務、法務、リスクマネジメント等の経営上の専門性も必要とされ、先の法改正によっても理事の経営における運営責任が一層重くなっている。

また、重責を担う会長の用務の見直し、常務理事の業務の確立等も課題となっている。

理事の責務を明確にし、理事選出区分の見直しを行い、職員選出理事の導入、女性理事参画の仕組み、業務執行理事の役割、役員報酬見直し等について、令和3〜4年度に検討を行い、必要に応じて実施する。

本会役員の役割を次のとおり想定し、検討を進める。

会長(1名)
本会の代表者として、法人の内部用務及び全市的な対外用務等の執行権限を有する。
副会長(2名)
会長を補佐し、円滑な本会の運営を推進する。
常務理事(1名)
会長の意に添い本会の財務、労務、法務、リスクマネジメント等の具体的運営を推進するとともに、役員間の調整や職員からの相談に応じるほか、会長等の補佐的業務も担う。
地域代表理事(5名)
地域(水沢、江刺、前沢、胆沢、衣川)で開催される役員対応業務を担当する理事で、本会の地域福祉推進協議会委員長のイメージである。
関係機関から就任する理事(5名)
社会福祉行政の代表、民間社会福祉施設役員、行政区長協議会代表、民生児童委員協議会代表、ボランティア連絡協議会代表の関係機関から就任する理事で、関係機関としての立場、専門的知識、役割から法人運営への助言等を行う。
職員代表理事(1名)
職員代表として事務局長を充てる。

今まで会長、副会長が対応していた対外的な業務のうち地域が主体となるものは、地域代表理事が担うことで、会長の負担軽減が期待できる。これまでと同様に、会長、副会長及び常務理事で三役会を開催し、事業及び経営について中心的役割と責任を負い、会長用務の代行や問題事項等の協議による意思決定により円滑な法人運営が見込める。

また、改正社会福祉法において、理事長(会長)以外にも社会福祉法人の業務を執行する理事として、業務執行理事を理事会で選定することができることになった(法第45条)ことから、設置の必要性を検討し、本会の法人運営の健全化にむけていくことができる。

年度実施する事項・目標等
3年度
  • 三役会議にて基本方針、業務内容、役割分担について協議する。
4年度
  • 理事の選任区分を見直し、理事会の承認を得て改選手続きを行う。
5年度
  • 計画に基づき執行する。

(3) 適正規模の職員配置

地域福祉事業等の福祉サービス業務量は、数字化が難しく、職員個々の業務量を適切に把握することが困難なため、職員定数の設定ができていない。また、順調な世代交代にむけて、平成29年度から3か年は新卒の職員採用も行っているが、財源の不安定さのため今後の採用について見通せない状況にある。

職員総数320名を超える大規模事業所となっており、働き方改革などの法制度導入の影響も大きいことから、適材適所の効果的配置を進めるなどして職員数のスリム化を図ることが喫緊の課題である。

機構の再検討の指標となる適正規模の職員定数を決める。業務量、兼職、雇用面等で効果的な勤務体制への見直し、新規雇用抑制などを通して効果的配置を進める。

例えば、現在31名いる権利擁護事業の生活支援員については、非常勤職員(週20時間未満)に任用替えを行い、15名で実施できるような効果的な事業運営を検討する。

また、正規職員と嘱託職員の業務内容の見直しや、定年前の正規職員が退職せずに嘱託職員の身分になる「嘱託職員希望雇用制度」等、雇用や就労に係る制度についても職員人事委員会で協議を行い、効果的な人員配置方針について協議する。

本計画による機構の再検討の際は、職員構成(正規、嘱託、臨時)の配置を検討して定数を設定する。また、職位・職名による業務等を明確化することに併せ、適正な人件費比率を設定し、それを目標に運営していくことも考慮する。

ここ数年、職員数は320〜330名で推移している。職員の分野別人員は、おおよそ地域福祉部門100名、児童福祉部門110名、介護保険部門110名の人数であるが、うち200名程度はパート職員である。

組織のスリム化や効果的な職員配置を行うとともに、財源の精査を進めることで処遇改善と雇用維持につながる。適正規模による適切な運用のために必要な見直してある。

年度実施する事項・目標等
3年度
  • 正規職員と嘱託職員の業務内容について、職員人事委員会で詳細を定め、機構の見直しを行い、理事会にて協議を行う。
  • 嘱託職員希望雇用制度等について職員人事委員会で検討し、必要な場合は理事会に諮る。
  • 事務組織規程の改正を行う。
4年度
  • 新たな事務組織規程での運用と希望退職者制度が決定された場合は、職員に周知を図り実施する。
  • 事務局長は、課や事業所から随時聴取し、事務分掌を見直し、常務理事とともに業務量を調整する。
5年度
  • 新体制の時間外勤務や処遇等を確認し、不適な場合は対応を検討する。
6年度
  • 目標値の再検討を行う。

(4) 人材育成策の充実

福祉課題は複雑多様化しており、その中にあって、本会の実施する事業は多分野、多領域にわたり、それぞれの専門知識や技術が必要とされている。

職員の専門性の確保と人材育成の体系化、その運用方法の構築が求められている中にあって、職員の資格取得意欲を高め、各種研修への積極的受講を奨励し、専門的な知識等の習得による資質向上をめざしていく必要性がある。福祉マンパワーの確保が困難な状況が続き、職員の専門性の確保や人材育成、早期離職の防止に向けての具体的な方策が必要となっている。

キャリアパス(職位や職務に就任するために必要な一連の業務経験又はその順序)検討委員会と研修委員会を設置し、人材育成を推進する。

(仮称)キャリアパス検討委員会の設置(専門性の確保)
  1. ① 人材育成方針の検討
    専門分野、専門領域の人材育成を進め、また一方では、福祉専門職として分野を越えての人材育成等の方針を模索し、総合職(分野を越えての異動あり)と専門職(分野を越えての異動なし)の選択制導入を検討する。事業所間、分野間での異動を可能とし、管理職をめざせるコースと現場で活躍し続けるコース等の選択制も検討する。
  2. ② キャリアパス策定の検討
    職位、職責または職務内容等に応じた昇進や昇格等を明確にする。有資格者に対する資格手当制度などの導入を検討し、資格取得意欲を高める。
  3. ③ 計画的な職員採用の検討
    資格や勤務年数、必要な技術、研修の受講履歴、内部登用の基準等について検討する。
  4. ④ 働きやすい職場づくりへの取組
    職場環境の整備・メンタルヘルス(精神衛生)相談の周知徹底をする。
(仮称)研修委員会の設置(人材育成)
  1. ① Off-JT(通常の仕事を一時的に離れて行う教育訓練)の研修制度構築と運用ルールを検討し、人材の育成を図る。
  2. ② 職位階層別研修の充実を図り、特に管理職・中間管理職の意識改革を図る。
  3. ③ 人材育成のためのスーパービジョン(熟練した指導者が活動に従事する職員に助言を与えること)体制の導入を検討する。
  4. ④ 新卒採用者及び新規採用者への新任者研修のあり方を検討する(職種ごとの新任者研修のあり方、担当制を含めた体制の整備)。
  5. ⑤ 資格取得助成金制度等の活用の周知、法人運営のための専門資格(法務・労務に精通する職員育成等含む)の取得を推奨する等の資格取得の支援を検討する。

※常務理事と事務局長、担当職員でキャリアパス検討委員会(仮称)を設置して協議を行い、理事会で方針が決定された後は、同じメンバーで研修委員会(仮称)に移行し、人材育成を進めていく。委員会の所管は総務財政課とする。

それぞれの専門分野において専門性が高い職員が増える。自分の将来の見通しや目標ができるので、モチベーション(やる気、意欲)の維持が期待できる。

年度実施する事項・目標等
4年度
  • 職員アンケートの実施
5年度
  • 総務財政課所管で、キャリアパス検討委員会(仮称)を設置し、人材育成方針の検討等を行う。
6年度
  • 研修委員会(仮称)に移行し、人材育成に努めていく。

(5) 働きやすい環境づくり

働き方改革に代表されるような、度重なる法・制度改正が行われ、働きやすい環境づくりが求められている。年次有給休暇や特別休暇等が取得しやすい環境、残業の削減、処遇の調整と改善、福利厚生の充実等、職員の労務管理や働きやすい職場環境づくり等が急務である。

しかし、人材確保も困難な状況であり、専門的な知識を持つ人材の確保や育成、離職者の防止策等が課題となっている。

一方で、ハラスメント(弱い立場の相手に嫌がらせをする行為)に関しては、職員就業規則にハラスメント禁止を定め、相談窓口を設置しているが、職員がいざ相談しようとしても安心して相談できる体制が明確でなく、プライバシーの保護等が不安要素となり、ハラスメントを受けていると感じる職員の有無等、実態がつかめていない。

適切な労務管理が行えるよう、総務財政課内に人事部門を置き、専門的に対応するセクションとなる仕組みとする。このことにより、人事労務、ハラスメント、メンタルヘルス等適切に対応することが可能となる。

ハラスメント対策については、人事部門所管で(仮称)ハラスメント対策委員会を設置して行っていく。具体的には、アンケートの実施やアンケート結果に即した対策の検討、ハラスメントの起こりにくい職場環境や研修の立案等を行っていく。アンケート用紙は、既存のもの(厚生労働省で実施している「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」の従業員調査等)を活用し、ハラスメント対策が有効に進んでいるかどうかをチェックするために毎年実施する。

さらに、相談対応フローチャートを作成し、相談の仕組みの見える化や、パンフレットやチラシによる組織方針の伝達と相談窓口設置に関する周知を行い、メンタルヘルスの確保に努める。

人事・労務管理の徹底は、雇用安定と就労意欲の向上につながることが期待される。

厚生労働省は、職場におけるメンタルヘルスケアとして、「セルフケア」「ラインによるケア」「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」「事業場外資源によるケア」という4つのケアを推奨している。早期にストレス状況に気付くことが、メンタルヘルス不調予防の第一歩であり、ストレスチェックの推奨やカウンセリング窓口の設置などを通して、ストレスの緩和に努め、職場環境の改善によるメンタルヘルスの改善が期待できるとしている。

今回のハラスメント対策では、職員への啓発を通じ容易に相談しやすい環境をつくり、早い段階での問題解決につなげ、適切な対応により事態を収束することができることが期待できる。さらに、実態把握をすることで、それに合わせた対策を講じることができる。

年度実施する事項・目標等
4年度
  • (仮称)ハラスメント対策委員会を設置し、その方策について協議を行う。
5年度
  • 協議結果に基づき実施する。
6年度
  • 必要に応じて評価基準項目の見直し(職員人事委員会・総務財政課)を行う。

3 効果的な事業運営と財政基盤の確立

(1) 会費・ささえあい協賛金の一元化

奥州市全体の世帯数は増加しているものの、人口減少や地域社会の変化等が影響し、会費等の納入率が低下している。加えて、会費等がどのような事業に使われているか分かりにくいとの意見があり、効果的な広報の必要がある。

また、地域によって取組み方法の違いによる納入率の差異があるほか、会費とささえあい協賛金の一元化を望む声もある。

人口減少に伴う会費収入の減少や行財政改革などの影響を踏まえ、財源規模の適正化を図るための住民会費額の調整を検討する。

自主財源強化のために一般会費とささえあい協賛金を一元化し会費額を調整する。

この調整には、地域の状況を理解する必要があり、福祉活動推進員や地域推進協議会、住民等に意向調査を行い、その結果を基に役員協議会で十分な検討を加えていく。また、会費一元化に伴う市民の負担の増加や、ささえあい協賛金を活用していた地域福祉活動推進母体への助成廃止についてば慎重に対応する必要がある。

会費一元化の際は、収納部署を総務財政課で一括管理することで、業務の効率化を図っていく。さらに、会費等の財源は本会の使命や経営理念の実現のためてあり、それが市民の福祉向上につながることの啓発を充分に行っていく。

会費の一元化は、会費を集める地域関係者の負担軽減を図ることができる。

また、現在、各地域(支所)で異なっている会費募集の方法、収納の仕組みなども統一でき、地域差の不満解消につながる。一方、世帯の負担額が増加するため、十分な議論と十分な広報、周知期間を設定して行わないと反発をまねくことも憂慮される。

これまで会費や協賛金等に対しては様々な声が寄せられており、住民の意向やニーズを調査して、状況の丁寧な把握が必要である。調査結果を可視化し、そのあり方を関係者てで改めて検討するプロセスを踏み、本会に対する期待の意味を込めて協力してもらえるような工夫をしていくことで、今後の地域福祉推進のための協働の基盤づくりにもつながる。

年度実施する事項・目標等
3年度
  • 一元化に向け、福祉活動推進員や地域福祉推進協議会等への意向調査と、かたりあいの輪福祉懇談会において会費等に対する意見を徴する。
4年度
  • 調査結果を基に検討委員会を開催する。
  • 会費の一元化に向けて、具体的な方針とスケジュールを示す。
5年度
  • 福祉懇談会を活用し、30地区単位で説明会を行う。
6年度
  • 広報、地域セーフティネット会議等における周知を図る。
7年度
  • 会費の一元化を図る。

(2) 補助・受託事業の適正化と新規国庫財源の確保

本会は、行政の外郭団体的要素が強く、本会理念とは少々異なるが福祉的要素が強いために受託していたものや他の受け皿が無いために肩代わりして行ったもの、慢性的・慣行的に踏襲しているものなどの補助・受託事業がある。これらの事業、合併後15年目になっても、地域間の均衡が図れない事業となっており見直しが必要である。

また、権利擁護に係る中核的な支援センター設置の義務化や、令和3年4月から「地域共生社会の実現」に向けた新事業「重層的支援体制整備事業」が始まるなど、本会の果たす役割が期待される重要な事業が次々と国から打ち出されている。

不均衡事業の見直しによるスリム化と効率化をすすめ、一方では行政にさらなる働きかけを行い早期に国の提唱する事業に着手し、地域福祉事業の推進と市民サービスの向上に努める必要がある。

事業評価委員会(仮称)を適宜開催し、発展・強化経営計画及び地域福祉活動計画に照らし合わせ、事業の必要性と妥当性を検証し、見直す体制を構築する。

福祉懇談会等で住民から寄せられる地域生活課題に応じて、行政に対し、地域共生社会の実現に向けて、先駆的な事業の提案やモデル実施等を行うとともに、委託事業等の効果と実績をあげていくために、継続性を担保できるよう、委託契約等のあり方に対する見直し(複数年にわたる委託契約など)を働きかける。その際は、本会が担う事業の意義や必要性の理解を得られるよう説明手法を工夫する。

地域共生社会の実現に向けて行政の地域福祉計画と本会の地域福祉活動計画の一体的策定と安定的な推進のため、本会福祉活動専門員が行う地域福祉コーディネーターの職責を専門職として諸計画へ位置づけ、継続的な地域福祉の国庫補助財源の確保を働きかける。多様化するニーズへの対応が必要であれば、「重層的支援事業」など新しい事業の展開に挑戦する。

これまでの福祉懇談会で挙げられた①平時・災害時の地域見守りと助け合いの構築、②買い物・除雪困難者対策、③交流サロンや互助による住民同士のつながりづくり、④助けを求めない困難世帯への関わり、⑤引きこもりや8050の問題、⑥ダブルケアの複合的な問題・ひとり親への支援などの、多くの課題の解決につながる。

年度実施する事項・目標等
3年度
  • 奥川市地域福祉計画、奥州市地域福祉活動計画に位置付けのある、地域支援と個別支援を進める専門職員は、それに基づく活動をする。
  • 地域福祉事業の国庫補助の受託を検討する。
4年度
  • 事業評価委員会(仮称)を開催する。
  • 地域福祉事業の国庫補助の受託を具現化する。

(3) 限られた人材や財源による効果的事業展開の模索(事務事業見直しの継続)

時代の移り変わりに伴うニーズの変化や多様化により、本会が実施する意義や効果が薄いと感じる事業も出てきている。これまでも職員を中心に事務事業の見直しを行ってきたが、市民等からの理解と賛同がなかなか得られず、ダウンサイジング(スリム化)が図られていない。マンパワーや財源の確保も年々難しくなっており、経営基盤を安定させるためにも効率的な組織運営を行うことは喫緊の課題である。

また、本会の社会的意義を明確にしていくためにも、委託事業や補助事業についても選択と集中化を図りながら、時代にマッチした内容へ見直していく必要がある。

事業評価委員会を立ち上げ、定期的に事業評価を行う。

事業スリム化、事業仕分け
「事業評価委員会」を適宜実施し、経営計画に基づき、事務事業の課題や達成すべき目標、地域の意見等を踏まえ評価を行い、事業の必要性と妥当性を検証し、見直しをする。
本会の理念と使命を果たすことができる事業かどうかを判断するために、一般市民を含む第三者による事業評価(外部評価)を行い、事業の選択と集中化を図る。
市民へより良質かつ安心・安全なサービスを提供するため、各種事業や福祉サービスを提供する施設についても第三者による評価を行い、改善が必要な面があれば早急に対応する。
上記の取組みにより、例えば「胆江地区広域交流センター管理運営事業」、「江刺高齢者生産活動センター管理運営事業」等の受託について検討する。
財政基盤安定、効果的組織運営
全職員が新たな経営ビジョンを共有し理解することで、サービス向上と安定的な財源確保をめざし、併せて職員の総合的な資質向上を図っていく。
財務管理においては、介護事業の将来性・継続性を見通した経営のため、適正な利益率や人件費率、積立など経営指標の分析を行い、持続可能で自立した組織経営にむけて取組み、課題となる①収支均衡管理、②積立資産管理、③人事管理を重点とし、新たな指標に基づく経営をしでいく。

各サービス提供施設を改めて評価することで、利用者本位の質の高いサービスの提供に努めることができ、新たな事業への取組みを通じて、社会環境の変化や地域ニーズに即応することができる。

このためには、安定的な財政基盤の確立が必要であり、事務事業の見直しと職員配置の見直しを並行して行わなければ効果的な状況にはならない。

年度実施する事項・目標等
3年度
  • 事業評価委員会の構成員(経営診断担当含む)を検討する。
  • 経営指標分析、経営ビジョンに基づく事業見直しについて検討する。
4年度
  • 「事業評価委員会」を行い、各種事業や提供サービス、サービス等提供施設の環境の見直しを図る。
  • 市民に見直しの項目を公表・説明し、組織運営の透明化を進める。
  • 施設修繕等の予算化と各施設内の環境整備を行う。
  • 事業を段階的に廃止する。令和6年度までに廃止するものは廃止できるよう関係機関・団体と交渉する。
  • 経営ビジョンに基づく、経営指標、積立などの年度計画を策定する。
5年度
  • 事業の廃止と関係団体との交渉、中間評価を行う。
6年度
  • 事業廃止項目について完了する。
  • 成果の検証、見直しを行う。
7年度
  • どのような点が改善されたか最終評価し、理事会へ報告する。

(4) 公的財源減に対応する保有財産の利活用方針の設定

奥川市が策定した「財政健全化に向けた取組み」によると、補助金負担金の整理合理化における公益性のある施設の運営・管理に対する運営費などの財政支援は、令和5年度までに令和2年度比で5%削減という方針が打ち出されている。

本会では、奥州市総合福祉センターと胆沢総合福祉センター、屋内ゲートボール場すば一く胆沢の3施設を保有しているが、奥州市からの運営費の補助金が減額になれば、維持存続が困難になることが想定される。市の見直し方針と同様に、利用料の増額や施設廃止、運営中止といった補助金の減額に対応した対策を検討していく必要がある。

行財政改革の影響により維持管理が困難となる本会保有財産(施設等)については、適切な利活用方針を定め、計画的な財産運営を行う。

奥州市総合福祉センターは、本会の本部拠点施設であり、自主財源確保の取組みを最大限に努力して運営費を捻出し、継続維持をしていく。胆沢総合福祉センター(胆沢デイサービス含む)と屋内ゲートボール場すば一く胆沢については、奥小11市からの補助金減などによる維持困難が懸念されることから、有効な利活用について具体的な検討を行う。

本会のダウンサイジングを考慮し、保有財産の有効活用に向けた利活用方針を定めることにより、新たな経営理念に沿った健全な財政運営を図っていくことができる。

年度実施する事項・目標等
3年度
  • 行政と協議する(補助金対象施設の維持等)。
  • 保有財産の利活用方針を策定する。
  • 奥州市総合福祉センターの恒常的経費を見直しする。
  • すば一く胆沢の行政財産使用の協議をする。
4年度
  • すぱーく胆沢の利活用について、関係機関と協議する。
  • 胆沢総合福祉センターについて、行政と利活用の協議を進める。
5年度
  • 利活用方針を決定し、それに基づく取組みをする。
6年度
  • どのような対策ができたか理事会へ報告し、評価をする。

(5) 安定した財源確保のための取組み

現在は、自主財源の確保のための取組みは、赤い羽根自動販売機の設置が中心となっている。参加費等の応益負担のしくみ、コラボレーション(共同で行う作業や制作)やファンドレイジング(NP0法人などが活動のための資金を個人、法人、政府などから集める行為の総称)の強化、クラウドファンディング(インターネットを通じて一般人から出資を募る活動)などの新たな手法を取り入れて自主財源を確保し、公費財源だけに頼らない組織づくりが必要である。

併せて、効果的な資金運用、積立金の増資なども計画的に進めていく必要がある。

適切な経営計画と事業方針に基づく、人件費・施設整備の将来見通しを立て、事業規模に応じた適正な積立金や福祉基金の年次計画を策定し運用する。

また、新たな社会問題への関心と共感を広げるため、目的を明確にした寄付活動であるファンドレイジングなど、柔軟な運用ができる資金確保の手法を取り入れた賛助事業への出資や募金方法を開発し、導入をめざす(※くらし・安心応援室の家族食堂の取組みがこれにあたる)。

同時に、寄付への意識の醸成や寄付をしやすい仕組みづくり、広告募集などの寄付システムなどを実施し、減少している寄付金に対する取組みを行う。

これらの仕組みを構築するため、地域福祉課企画調整係と総務財政課財政係を中心にチーム編成をして取り組む。

安定した法人運営の確保や、制度の狭間にある新たな地域生活課題の解決を調整するための財源として、先駆的な資金確保の方法を模索することで、市民への啓発につながる。

企業とのコラボレーションによる寄附付き商品の開発、実習受入による実習謝礼増(人材確保にもつながる)、企業との協働によるフレアイガー自動販売機の導入、封筒への企業広告掲載、インターネット広告、クラウドファンディング導入による多様化するニーズへの即応、経済産業省や農林水産省など他の省庁財源の活用などの中から可能性を検討するなどすることにより、本会内部での意識改革となり、ひいては恒常的に安定した財政基盤の確立を図ることができる。

年度実施する事項・目標等
3年度
  • 地域福祉のファンドレイジングに関する調査研究、導入検討を行う。
4年度
  • ファンドレイジングもしくはコラボレーション事業を導入する。
5年度
  • その他自主財源の開発を検討し、実施する。
6年度
  • 適正な積立金や福祉基金の年次計画を策定する。

4 ニーズに基づいた事業展開と評価及び支援体制の確立

(1) 社会資源(地域や関係機関)との連携強化

町内会関係者、福祉活動推進員(行政区長)、民生委員・児童委員、ご近所福祉スタッフ等の地域における福祉活動推進者との連携は、これまでも重点事項として推進してきた。今後、さらにアウトリーチ(地域への奉仕活動、現場への出張サービス)の仕組みを整えること、奥州市の進めている協働のまちづくりの中心となる地区振興会とのさらなる具体的な連携を図ることが、今後の重要課題である。併せて、積極的に地域のニーズを把握し、対処する事業を企画・立案・実施し、それを可視化する必要がある。

地域階層ごとの関りを明確にし、福祉活動専門員による地域包括ケアシステム支援体制の構築から、地域支援を的確に進める。

さらに、社会資源開発、法人連携の視点を加え、充実した活動の展開をめざす。

地域支援の方針を、①福祉活動専門員によるアウトリーチの徹底、②「連携・協働の場」となる地域セーフティネット会議を軸とした、地域住民の複合化・多様化した地域生活課題や潜在的ニーズの受け止めと、地域を基盤にして解決につなげる支援やその仕組みづくり、③地域支援により把握した困難な複合課題を受け止め、福祉の分野を超えた関係者による横のつながりを作りながらの包括支援体制の構築とする。

地域支援におけるPDCAサイクルによる企画・立案・実践と可視化を進め、①地域生活課題の「見える化」により地域住民が主体的に課題解決について考えるような情報発信(広報等)、②身近な地域での解決できる体制や仕組みづくり、③実績を積み重ねて信頼を得るような地域実践、④複合化、多様化した地域生活課題の共有と解決などの4サイクルの確立をめざしていく。

地域階層ごとの支援の取組みは、第2層(30地区)の振興会圏域では、その役割を広域的な地域生活課題の解決とし、①防災・福祉の連携、②地域福祉とコミュニティ計画の一体的推進や地区地域福祉計画の策定等を、モデル的に指定するなどして取組む。また、第3層の行政区圏域の役割は、小地域福祉活動の実践と位置づけ、地域セーフティネット会議を軸とする生活支援等の普及をめざす。

職員のアウトリーチの徹底により、地域セーフティネット会議や生活支援の充実など地域実践を積み上げ、社協が地域住民から信頼され頼られる存在となるよう、地区振興会の策定するコミュニティ計画に地域福祉事業の位置づけを確保することにより、事業を明確化させ連携することができる。

年度実施する事項・目標等
3年度
  • 振興会との連携事業を広域的課題の解決と位置付ける検討を行う。
4年度
  • コミュニティ計画等との連携や実践に向けた検討を行う。
5年度
  • コミュニティ計画等へ「地域福祉」内容の盛込みを依頼、実践(モデル指定開始)を行う。
6年度
  • 各地区振興会との情報交換を定期的に行い、課題等を共有し、支援や協力を行う。
7年度
  • 現状を把握し、今後の振興会との連携のあり方について検討する。

(2) 福祉活動専門員の配置見直しと専門性の確保

地域の福祉に対する機運・醸成度に温度差が感じられる。どのような状況下においても、本会職員は地域から望まれる対応ができ、地域住民から頼られるようにするため、福祉活動専門員としての経験やスキル(技能)向上が不可欠である。

地域福祉活動に直接従事する職員を福祉活動専門員に任命する。常に研鑽し、専門職としての自覚を持ち、丁寧に市民に向きあう。

福祉活動専門員は、CSW(コミュニティ・ソーシャルワーカーを略している。高齢者や障がい者、子育て中の親などの要援護者の課題を解決するための支援をする者)の業務をすることを目的に任命している。地域住民と一緒に課題解決を考え実践し、信頼される存在となるため、職員一人ひとりのコミュニケーション能力や経験、習熟度に合わせた研修機会の確保と、必要な知識やスキルの習得研修を計画的に行い、地域住民が主体的、積極的に活動できるようにマネジメントする能力の向上の3点を視点に養成を図る。

拠点ごとの役割は、本所に相談支援・権利擁護の個別支援と包括支援体制の担当を、支所に地域支援と地域協働の担当を位置づけ、その業務に専念できる職員の配置をする。

役割として、住民主体による地域生活課題の解決を支援するため、地域支援は福祉コミュニティ形成を担当し、個別支援は複合的問題や制度の狭間にある生活課題の解決を担当する。

地域福祉活動を進めるため、①アウトリーチ、②総合相談・生活支援、③地域づくりのための活動基盤整備に関する業務の3つをマニュアル化し、実践を徹底する。

サービスの良質化と効率化、専任化を図るため、支所業務の一部事務を本所に集約する。

国が提唱する地域共生社会の考え方に基づいて、令和元年度から地域セーフティネット会議の立ち上げ支援を始め、福祉活動専門員の存在と役割が地域や関係機関に認知されてきている。セーフティネット会議で提起された地域生活課題の解決のため、地域支援を担当する支所職員、個別支援や包括的支援を担当する本所職員の連携により、効率的かつ専門性を活かした体制が構築される。

また、業務のマニュアル化や支所職員の適正配置により、地域差の解消が見込まれる。

年度実施する事項・目標等
3年度
  • 地域福祉計画及び地域福祉活動計画へ福祉活動専門員の役割が位置づけられることを受け、その取組みを推進する。
  • 地域支援拠点を支所、包括支援体制拠点を本所の「相談支援・権利擁護部門」に位置づけ、連携体制を構築する。
4年度
  • 事業推進体制に基づく取組みを行う。
5年度
  • 業務成果の評価、見直しを行う。

(3) 3部門の事業方針の設定

①地域福祉部門の事業方針

既存事業については、事務事業の見直しを行ったが、業務改善にとどまる程度で整理・改革までは進んでおらず、事業規模は縮小されていない。今後も限られた職員が手厚い地域支援を進めるには、見直しが必要となっている。

さらに、地域共生社会の実現に向けて、本会の今後の重点施策は、相談機能の充実、権利擁護の推進、生活困窮者自立支援事業などの個別支援になることが想定される。

地域福祉部門の重点事業は、①地域住民や関係者の連携・協働による地域生活課題の解決や地域づくり支援、②福祉教育・ボランティア活動を通じた地域住民の主体形成、③地域関係者との協働促進の3点とする。

さらに、生活応援課を新設し、今後ますます重要となる相談援助を中心とする個別支援に対応していく。

経営ビジョンに照らし合わせ、既存の本所・支所の事務事業のあり方の見直しを図るため、「事業評価委員会」を適宜実施し、役割を終えたと判断される事務事業、従来からの慣例等により継続している事業の変更や廃止を計画的に実施する。

支所おける会費・募金などの総務的な業務を可能な範囲で本所に集約し、業務効率化を図り、支所の地域支援の専任化を進める。

これまでは事務事業の見直しを実施できていないため、本計画による取組みを確実に行い持続可能な組織づくりにつなげていく。新たな経営ビジョンに基づく事務事業への転換を地域関係者に説明を重ね、理解を得ていくことで実施に結びつける必要がある。

役割を終えたと判断される事務事業の廃止・ダウンサイジングを職員一人ひとりが考え理解し実施していくことで、その効果から生じる余力を地域住民のサービスにシフトしていき、手厚い地域支援と適切な個別支援の対応が可能となる。

年度実施する事項・目標等
3年度
4年度
  • 事業評価委員会による評価、見直し方針を策定する。
5年度
  • 方針に基づく事務事業の変更、廃止を計画的に実施する。

②介護福祉部門の事業方針

入所施設を有する他法人と本会が取り扱っている事業が競合し、初期に本会が参入した20年前の当時と介護を取り巻く環境が大きく異なってきている。地域福祉部門と連携体制を構築し、本会らしい介護サービスの展開が必須である。

5年後や10年後を見据えて、本会の提供するサービス量を熟慮した事業整理を行う必要がある。

奥州市内では、介護事業所及び介護関係施設の急増により、慢性的な介護職員及び看護職員の不足となっている。本会でも人手不足が深刻化する中にあって、7事業所を経営するために、人員の確保・定着は喫緊の課題であり、現行の実施事業を取捨選択し、地域福祉事業との連携を図り実施することをめざす。

また、社会福祉協議会の特性を生かし、制度で対応しきれない利用者の支援をはじめ、介護度・障害程度の重い人や認知症の人、医療的ケアを要する人の支援を積極的に担うことにより、「在宅で生活できる地域づくり」の一翼を担うことができるようなサービス提供や、そこで得られた利益を地域福祉活動に還元することができる介護事業所の運営をめざす。

各事業の具体的な取組みは、次のとおりとする。

居宅介護支援事業は、地域共生社会の実現にあたり、個別ケアの中心である介護支援専門員が制度外を含めた住民の個別課題を積極的に把握する。さらに、地域福祉部門職員との共有・連携を強化することにより、地域課題として一体的に解決していく仕組みを構築し、他の事業者との課題の理解を深め、地域全体の支援体制づくりへつなげていく。また、主任介護支援専門員の資格取得を推進し、質の高いケアマネジメント及び介護支援サービスの適切かつ円滑な提供のため、知識・技術修得に努め事業を継続する。

訪問介護事業は、人員不足により事業を継続できず撤退する事業所が増加する中、訪問介護事業を必要とする利用者に、安定したサービス提供ができる体制を強化し、継続して運営する。併せて、在宅生活継続のため、保険サービスでは提供しきれないニーズに対応する、保険外サービスの提供を実施していく。また、医療的ケア、同行援護、強度行動障害援護等の資格取得を積極的に行い、重度障がい者等の支援に務める。

胆沢デイサービスセンターは、現在定員30名で運営しているが、近隣に通所介護事業所が多数あり、定員割れが続いている。配置基準を満たす職員数や有資格職員の確保に苦慮しているため、運営区分の転換を検討する。併せて、胆沢総合福祉センター施設運営の利活用について検討に入るため、施設運営の方針の検討結果により、デイサービスの運営のあり方を検討していく。

デイサービスセンターだいしの園及びデイサービスセンターじゅあんの園について、引き続き地域密着型サービス事業所として運営する。

小規模多機能型居宅あすもは、地域交流やつながりの場を備えた地域密着の生活支援拠点として、要介護になっても住み慣れた自宅や地域で自分らしい暮らしをしていただくため、訪問・通い・泊りの対応で、最後まで暮らしを支える施設として、さらに地域に根差した運営を行う。同様に、グループホームじゅあんの園も地域密着型施設の趣旨に添い、住民と共に支えあい見守りのできる体制を地域福祉部門と連携して構築する。

当面、各施設の運営に関しては、上記のとおり取り組むこととするが、通所介護事業及び小規模多機能型居宅介護事業、認知症対応型共同生活介護事業においては、介護を取り巻く環境、職員体制、動向(令和2年から11年の間に介護職員の約3分の1が定年退職を迎える)に注視し、縮小・統合・廃止についてもあわせて検討していく。

介護市場動向
奥州市の総人口は、年々減少しており、10年後には10万人を下回り、高齢者人口は、2020年をピークとして緩やかではあるが減少することが予測されている。
市内の介護保険事業所は、利用者だけではなく働き手の確保に課題があるにも関わらず、新たな事業所が開設されている現状がある。特に通所介護事業所においては、企業の参入が容易であり、その企業の強みである資金や市民向けサービスなどを基盤とした経営を展開している。他法人との競合を避け、介護事業部門の人材を継続性や安定性のある事業に集中することで、人材確保や安定した経営に向けた効果が考えられる。
事業所ごと動向
ア 居宅介護支援事業所
利用者は、その法人が経営する他の介護保険事業所または施設との関連が高く、入所施設を有する事業所ほど重度の方の利用者が多い傾向にある。他の居宅介護支援事業所では浸透していないインフォーマルサービスとの連携により、社協らしさを発揮する。
イ 訪問介護事業所
市内で最大規模の事業所である。他法人が規模縮小や閉所をする中、訪問介護サービスの利用が著しく減少することは考えにくい。
ウ 通所介護事業所
入所までの最初の入り口になっており、事業所数も横ばいで、競合している状況にある。また、介護報酬単価も年々下がり、人員配置基準による加算体制の状況で、単独の通所介護事業所ではハードルが高くなっている。
このことから、通所介護部門については、他法人にサービス供給を任せ、内部の他の事業所の人員を手厚くしていくことが必要と考える。
エ 小規模多機能型居宅介護事業所、認知症対応型共同生活介護事業所
特別養護老人ホームへ入所するまでの中間施設としての役割が高く、所在する地域に広く認知されている。
効果等
本会らしい介護サービスとして、介護事業部門と地域福祉部門が連携することにより、誰もが住み慣れた地域で自分らしく安心して暮らせる事業体制が構築され、介護を受けながらも、近隣とのつながりを維持していくコミュニティのある暮らしが実現される。
年度実施する事項・目標等
3年度
  • 国の施策や地域福祉活動について重点的に学習する。
  • 介護保険サービスと地域福祉活動の連携のあり方を検討する。
  • 通所介護利用者及び居宅介護支援事業所へ需要調査を行う。
  • 訪問介護事業の介護保険外サービスを確立し、提供する。
  • 胆沢デイサービスセンターの運営について検討を開始する。
4年度
  • モデルケースにより検証し、結果を踏まえてマニュアル化を進める。
  • 可能なケースから順次、地域福祉と連携したサービス提供を進める。
  • 各社会福祉法人との協議(事業所を整理する場合の検討)を行う。
  • 胆沢総合福祉センター拠点施設の利活用方針に基づき、胆沢デイサービスセンターの運営方針を検討する。
5年度
  • 地域福祉と連携したサービスを全市に展開する。
  • 協議結果を踏まえて、今後のあり方を検討する。
  • 胆沢デイサービスセンターの運営方針を定める。
  • だいしの園の運営方針の検討を行う。
6年度
  • 胆沢デイサービスセンター及びだいしの園は、検討結果に基づくデイサービスの運営を行う。

③児童福祉部門の事業方針

本会の児童福祉部門事業は、保育所及び放課後児童クラブの施設運営が主となっている。

しかし、子どもと子育て世代をめぐる環境は、少子化の影響や社会情勢により大きく変化し、その課題も一層複雑化している。

平成27年度施行の子ども・子育て支援新制度では、「子どもは社会全体で育てる」という方針を出し、子どもを地域の中心に据えつつ、子育て世代の社会参加や地域づくりを進めていくことが重要としている。

本会としての児童福祉を推進するためには、その基本方針に沿ったうえで、現在展開している事業を活用し、関係機関と協働する本会の特性を生かした子どもと子育て世代の支援と、子どもと子育て世代を含めた地域福祉を実践する役割を担う必要がある。

児童部門職員の専門性を生かした地域福祉への取組みと、ファミリーサポートセンター事業の柔軟な取組みと充実を図る。

放課後児童クラブ指定管理事業とファミリーサポートセンター事業の運営受託の継続により、各地域の子どもと子育て世代を地域につなげる取組みを推進する。

放課後児童クラブの運営
本会が運営する放課後児童クラブは現在15施設であり、奥州市の放課後児童クラブ運営事業者として中心的な役割を担っている。多数の児童クラブを運営することで、市内の子育て世代の動向を把握できる状況にあり、本会の地域福祉活動に生かせるものと考えられる。
奥州市ファミリーサポートセンターの運営
ファミリーサポートセンター事業は、住民同士の相互援助活動という点で、地域福祉活動の意義も含まれている。
また、いわゆる産後うつ病や子育てに負担感を感じる保護者にとってのストレス解消のための預かりを進めることで、子育て世代が地域への親しみを感じ、また、社会的孤立を防ぐことで虐待防止にもつながると考える。
地域福祉事業との連携
児童部門の職員は、子育て世代の意識や動向を把握しており、この専門性を生かした取組みは、懇談会等で課題として挙げられる、地域における「子育て世代の不在」解決につながるものと考える。
また、こども食堂の運営支援や共同募金の学校募金活動、福祉教育等、児童生徒に関係する事業についても、専門性を生かし内容を深めた活動につなげられる。
年度実施する事項・目標等
3年度
  • 児童福祉部門と地域福祉活動の連携のあり方を検討する。
4年度
  • 検証結果を基に推進の方向性を決め、必要な学区でモデル事業として実施する。
5〜7年度
  • 見直しをしながら継続する。

(4) 災害対応の強化

発災時における避難行動には、地域により大きく違いがある。地域セーフティネット会議を通じて、災害の危険箇所等の点検による防災意識の醸成や、避難行動要支援者の避難等の体制づくりを進めていくことが大切である。

奥州市関係課(福祉課、危機管理課)とは、平成25年度から定期の打合せは行っているが、地域の防災組織との連携、具体的な方策が打ち出せていない。早期に仕組みづくりを行い、地域とその内容を共有し、有事の際に有効に機能できる仕組みづくりが必要となっている。

また、大規模災害時に開設する災害ボランティアセンターの設置・運営マニュアルは、平成26年7月に作成したものである。発災時の初動期に求められる判断、状況把握や調整、広域での連携と対応等について、県及び県社協での取組みもあり、見直しと必要に応じた改訂作業が必要となっている。

地域セーフティネット会議をベースとして、要配慮者の個別計画づくりを自治組織や自主防災組織と連携して進め、地域ごとの特性に応じた有事の意識づくりと仕組みづくりに努める。

併せて、大規模災害発生時には、迅速に災害ボランティアセンターを開設し対応できるようにマニュアルを見直す。

災害時避難支援
平常時から、災害時に備えた身近な地域での関係づくりや支援体制づくりを進めていくため、地域セーフティネット会議などの小地域単位による、要配慮者の個別計画づくりを自治組織や自主防災組織と連携して体制を構築する。
災害時避難支援の体制構築のため、平常時における民生委員・児童委員と本会による避難支援台帳の整備を進め、行政区と振興会の安否確認・避難誘導訓練の普及や、行政との連携を重点に進める。
災害ボランティアセンター運営マニュアルの改定
災害ボランティアセンターに関しては、災害発生時、迅速に開設できるよう見直しを行い、現状に対応したマニュアルを策定する。県内社協の相互支援協定に基づき、被災直後における被災地の状況把握、情報収集及び調査活動、発災社協の状況把握を行うの3点をマニュアルに加える。
広域ネットワーク連絡会と連携した、災害ボランティアセンターの開設や運営の訓練を実施する。加えて、岩手県や奥州市の総合防災訓練と連動した訓練の実施を模索し、関係機関のみならず、市民団体や市民ボランティア、社会福祉法人との連携協力も視野に入れながら、段階を踏んで体制を構築する。

平常時から住民と行政の関係課、防災士会、本会の専門職(福祉活動専門員等)が連携していくことは、総合的な災害対応の基盤づくりの気運の醸成や住民同士のつながりの機会としての期待がある。

また、岩手県内で開設された災害ボランティアセンターの後方支援に、これまで多数の職員が派遣されたことで経験が蓄積されているものの、本会としては未開設となっていることから、すべての職員が開設から運営に向けた訓練に携わることで、発災時の対応が円滑となる。災害ボランティアセンターの後方支援の派遣については、復興までの長期にわたる支援も想定されるため、多くの職員が訓練を経験することで安定した職員派遣計画が立てられる。

市民団体である奥援隊(災害救援ボランティア)や防災士会などの経験豊富な人材や市民ボランティアの協力を得て、平常時からのつながりをつくることで、社会資源の確確保を行うことができる。

さらに、社会福祉法人と発災時の連携協定と、企業との関係づくりにより社会貢献活動の啓発を図り、地域福祉の意義づけと企業のイメージアップの相乗効果をねらいたい。

年度実施する事項・目標等
3年度
  • 市関係課との進め方について具体的に協議(継続)する。
  • 地域セーフティネット会議を単位とした研修を実施する。
  • 運営マニュアルの改定を進める。
    • 災害ボランティアセンターマニュアルの見直し
    • 職員を対象とした災害ボランティアセンターの研修と訓練の実施
  • 発災時における社会福祉法人との連携に向けた協議を進める。
  • 市や県、県社協との連携のあり方について協議する。
  • 市民団体との連携のあり方について協議する。
4年度
  • 災害ボランティアセンターマニュアルの見直し(関係機関調整)を行う。
  • 福祉避難所の開設に向けた訓練を実施する。
  • 発災時における社会福祉法人との連携方法を決定(研修、訓練の実施)する。
  • 市や県、県社協との連携方法を決定する。
  • 市民団体との連携方法を決定(市民団体と連携した研修や訓練の実施)する。
5年度
  • 特定の地区や地域を設定した総合訓練に向けた研修と訓練を実施する。
6年度
  • 見直しをしながら継続実施する。
7年度
  • 見直しをしながら継続実施する。